非可逆圧縮はオーディオから倍音成分を除去してしまいますが、その影響は周波数帯域全体で均一ではありません。明瞭性、解像度、そしてトランジェントの微細な表現を行う高音域が最も顕著に影響を受けてしまいます。Focusはまさにその帯域をターゲットとし、最も重要な部分の倍音成分を再生します。
その結果、原信号の音色を変えることなく、よりクリアで、微細な表現が可能で存在感のあるサウンドが得られます。
仕組み
Focusはソースの信号から2次高調波を生成し、約2.5 kHz以上の周波数に選択的に適用します。高次高調波は効果的に抑制され、クリーンな出力を維持します。2.5 kHz以下では、ボーカルや中低域のコンテンツへの音色の着色を避けるため、倍音生成は意図的に低減されています。
この帯域選択型のアプローチが、Focusを一般的な「ブロードバンド・ハーモニクス処理」と区別するポイントです。スペクトル全体を均一に処理するのではなく、圧縮によるダメージが最も聴感上顕著な帯域——微細な表現、明瞭度、空間表現力——に効果を集中させます。
処理はサイドチェーン・アーキテクチャで動作します。Focusは入力信号を直接変えることはしません。倍音成分はパラレルパスで生成、フィルタリング、レベリングされた後、原音に融合されます。これによりエフェクトを精密にコントロールでき、歪みを最小限に抑えます。
入力レベルに依存しない一貫した性能
一般的なオーディオ・エキサイタは、入力信号レベルに比例して倍音成分を生成します。ソースのリファレンスレベルが一定であればうまく機能しますが、コンシューマーエレクトロニクスにはその余裕はありません。例えばテレビでは放送、ストリーミング、ディスク再生、アプリを切り替える毎にリファレンスレベルは最大40 dB以上変動します。
Focusは入力レベルに関係なく一貫した性能を維持します。ソースが強い放送信号であれ、弱いストリーミング配信であれ、倍音生成の動作は同一です。これにより、あらゆるソースに対応する必要があるマルチソース製品において、高い信頼性を発揮します。
Focusの適用領域
FocusはHD Remasterの上流のプリプロセッサーとして最も効果を発揮します。ハイレゾ・アップサンプリングの前に高域ハーモニクスを復元することで、HD Remasterにとってより豊かなソース素材を提供し、圧縮された信号を直接アップサンプリングするよりも自然なハイレゾ結果を実現します。
Focusはタイムドメインで動作し、演算負荷が最小限であるため、幅広いプラットフォームへの組込みに適しています。